更年期・加齢とは
更年期障害とは、閉経に伴って女性ホルモンの減少が原因で起こる心と身体の不調のことをいいます。女性特有の不調ですが、更年期障害のあらわれ方には個人差があり、更年期になっても約半数の女性にはまったく症状がみられません。
更年期障害の症状は大きく3種類に分けられます
- ① 血管の拡張と放熱に関係する症状
- ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗など
- ② その他のさまざまな身体症状
- めまい、動悸、胸が締め付けられるような感じ、頭痛、肩こり、腰や背中の痛み、痺れ、疲れやすさなど
- ③ 精神的な症状
- 気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠など
更年期障害は身体的因子・心理的因子・社会的因子が複雑に関与して発症しますので、まずは十分な問診を行うことが必要です。その上で生活習慣の改善や心理教育を試み、それでも改善しない症状に対して薬物療法を行います。
更年期障害の薬物療法は大きく3つに分けられます。
心療内科での漢方薬
漢方薬はさまざまな生薬の組み合わせで作られており、全体的な心と身体のバランスの乱れを回復させる働きを持ちます。多彩な症状を訴える更年期女性に対しては「婦人科三大漢方」とも呼ばれる当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸を中心にさまざまな処方が用いられます。
比較的体力が低下しており、冷え性で貧血傾向がある方に対しては当帰芍薬散を、比較的体質虚弱で疲労しやすく、不安・不眠などの精神症状を訴える方に対しては加味逍遙散を、体力中等度以上でのぼせ傾向にあり、下腹部に抵抗・圧痛を訴える方に対しては桂枝茯苓丸を、それぞれ処方します。
心療内科での薬物治療
気分の落ち込み・意欲の低下・イライラ・情緒不安定・不眠などの精神症状が最もつらい症状である場合には、抗うつ薬・抗不安薬・睡眠導入薬などの向精神薬も用いられます。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)などの新規抗うつ薬は副作用も少なく、またほてり・発汗など血管の拡張と放熱に関連する症状にも有効であることが知られています。
婦人科でのホルモン補充療法
更年期障害の主な原因がエストロゲンのゆらぎと減少にあるため、少量のエストロゲンを補う治療法(ホルモン補充療法:HRT)が行われます。HRTは、ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗など血管の拡張と放熱に関係する症状に特に有効ですが、その他の症状にも有効であることがわかっています。エストロゲン単独では子宮内膜増殖症のリスクが増大するため、子宮のある方には黄体ホルモンを併用します(エストロゲン・黄体ホルモン併用療法)。手術で子宮を摘出した方には、黄体ホルモンを併用する必要はありません(エストロゲン単独療法)。HRTに用いるホルモン剤には飲み薬、貼り薬、塗り薬などいくつかのタイプがあり、またその投与法も様々です。婦人科専門医とよく話し合いながら、その人に合った最適な治療法を選択していきます。HRTに関しては、一時乳がんなどの稀な副作用が強調される傾向にありました。しかし最近になって、更年期にHRTを開始した人では心臓・血管の病気や骨粗鬆症など老年期に起こる疾患が予防できるという利点が、再び見直され始めています。